やまはくブログ

Yamahaku Blog

「イチョウって…」

秋と言えば紅葉!現在、博物館前にあるイチョウも黄金に色づき、とても綺麗です。
さて、そんなイチョウですが、太古の昔から地球上に存在していたことをご存知ですか?
なんと、その歴史は2億年以上にもなるそうです!東北でも、岩手県久慈地域から、新生代 古第三紀 暁新世~始新世(約6600万~3390万年前)のイチョウの化石が見つかっています。

実はこの化石、現在開催中のプライム企画展「東北の自然史大図鑑―The Great Natural History of Tohoku―」の会場にて展示中です。

(岩手県立博物館蔵)

形、そのままですね…!
人間が登場する遥か昔から変わらないものが身近に存在するなんて!なんだかワクワクしてきませんか?
今回の企画展では、東北各地の「化石、岩石、鉱物」に焦点を当て、魅力あふれる東北5億年の自然史を紹介しています。

山形が誇る、世界でたったひとつだけの化石「ヤマガタダイカイギュウ」の実物も6年ぶりに公開します!
青森県指定天然記念物「アオモリムカシクジラウオ」も県外初公開です!
東北6県の県の石、勢ぞろいしています!
隕石、三葉虫、アンモナイト、琥珀、恐竜の化石(レプリカ、一部分のみ)、貝や植物の化石などなど…盛りだくさんのワクワクする資料が皆さんをお待ちしています!!

会期は12月15日(日)までです!
東北地方の、ひいては地球の歴史に思いを巡らせてみませんか?

★展示図録を販売中!これ1冊に東北の自然史がギュッと詰まっています!
★12月7日(土)13:30~担当学芸員の解説会があります!申し込みは不要ですので、お気軽にご参加ください。(博物館の入館料が必要です)

(当館蔵)

ちなみに、今回のブログ担当のお気に入りはこの三葉虫です。何でエビぞり?
会場で探してみてください!

第4回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介する「博物館講座」を実施しております。
 9月14日(土)は当館職員の中川裕太学芸員が講師を務め、第4回博物館講座が開かれました。
 中川学芸員は今年4月から勤務をはじめたばかりで、県立博物館で話をするのは今回が初めてでした。最初こそ緊張した様子でしたが、参加者の皆様の関心も高く、熱心に話を聞いてもらえたためか、次第に滑らかなスピーチができるようになっていました。
 講座の演題は「野生動物を調べる-その方法と実践-」。中川学芸員が以前勤務していた、野生動物の生態を調べる企業での体験を交えながら、調査に使う道具や調査方法を紹介したり、実際の調査の様子を動画で流したりと、普段の生活では知ることのできない野生動物とのかかわりを知ることが出来る、貴重な講演でした。
 また、本物の動物の頭骨を使い、資料と照らし合わせながら動物の種類を当てるというワークショップも行いました。参加者も隅々まで眺めながら、楽しく参加してもらうことが出来ました。
 次回は12月14日(土)、齋藤祐一館長による第5回博物館講座を開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますので、ぜひご参加ください。

プライム企画展「東北の自然史大図鑑」開展

長く厳しい暑さもようやく和らいで、朝晩は肌寒いくらいの日が増えてきた山形ですが、皆さんがお住いの地域はいかがでしょうか。
博物館そばの桜並木の樹木は、連日の猛暑に耐えた疲れが出ているのか、もうすでにかなりの葉を落としています。猛暑による疲れや急な寒暖差は、樹木だけでなく人も不調になりがちですので、この時期体調に気をつけて過ごしたいですね。

自然豊かな霞城公園では、これから秋ならではの光景が様々見られるようになり、散策がより楽しい季節になります。その先陣を切るように、いつの間にか東大手門付近でヒガンバナが咲き始めていました。大変な暑さが続いた夏でしたが、季節の変わり目を察知して現れた鮮やかな赤い花を見ると、やっと暑さがおさまって秋が来るんだとホッと安心する思いです。

さて、博物館では、9月28日(土)から12月15日(日)まで、プライム企画展「東北の自然史大図鑑 The Great Natural History of Tohoku」を開催します。東北各地の「化石、岩石、鉱物」に関連する資料に焦点を当て、東北地方の自然史の魅力を紹介する内容になっています。当館SNSでも連日関連情報を発信していますので、ぜひチェックしていただき、秋の散策とあわせて博物館へお越しください。お待ちしています!

第3回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介していただく「博物館講座」を実施しております。
 9月14日(土)は東北芸術工科大学から松田俊介(まつだしゅんすけ)先生を講師にお招きし、第3回博物館講座が開かれました。県内外から多くの方にご参加いただきました。
 講座の演題は「民俗芸能の技と知恵を引き継ぐ」でした。山形県の各地には、遊佐町の番楽「杉沢比山」をはじめ、古くから地域に伝わる民俗芸能が数多く存在します。古くは江戸時代から伝わるというこうした地域の民俗芸能が、少子化などで担い手が不足しているという問題があり、伝統の継承や存続が課題となっています。こうした現状の中、地域外人材の活用(外部化)や、映像や音声の記録を保存・伝達する工夫(情報化)、現代の情勢に合わせ日程や規制を緩和する(意義の問い直し)といった取り組みにより、民俗芸能の技術や意義を後世に伝えていこうという動きがあることを知ることが出来ました。そこには、民俗芸能を守りたいという地域の方々の熱い想いが感じられました。高擶小学校(天童市)では地元の小学校で獅子踊りを継承するなど、子どもたちを通して共存する姿も紹介されました。
 アンケートでは「伝統芸能の保存は大変難しい現実に直面しており、継承への提案があり参考になった。」「知らない芸能もたくさんあることを認識いたしました。後進育成のことについても考えさせられました。」といった意見が寄せられ、民俗芸能の今後について皆さんも考えられていることが伝わりました。今後も専門家による研究成果を知ってもらう貴重な機会として講座を開催したいと思っています。

 次回、第4回博物館講座は10月19日(土)、当館で動物部門を担当している中川裕太学芸員を講師として開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますのでぜひご参加ください。

博物館実習を実施しました

 8月17日(日)~23日(金)の期間、学芸員の資格取得を目指す大学生を対象とした博物館実習を実施しました。今年は、7大学から12名の大学生を実習生として受け入れました。

 常設展示やバックヤードなど、実際の博物館の見学に加えて、各分野の学芸員から資料の取扱い等について講義や演習を通して直接指導を受けたり、企画展示の撤収作業を実際に体験してみたり、教育普及事業や広報活動、他機関との連携など、学芸員の専門分野以外の業務について学んだりして、博物館の運営全般について幅広く知る機会となりました。

 今年は特に、実習期間中に国宝「縄文の女神」を他施設に貸し出す業務に立ち会うことができました。絶対にミスの許されない作業であるため、移動や梱包の手順について何度もシミュレーションを行った上で実行に移すというプロの仕事を、固唾を飲んで見守った経験は極めて貴重なものでした。

 最終日には、実習生が各自テーマを定めて、展示物の解説をしてみるという模擬解説に挑戦しました。各実習生は緊張の中にも、丹念に調べて準備した成果を十分に発揮して、分かりやすく、興味深い解説ができたようです。

 実習に参加した学生には、これを機に博物館への関心をさらに高めて、学芸員という職業を選択肢の一つに加え、今後一層勉学に励んでいただきたいと思います。なお、来年度の実習生の募集については、令和7年1月以降に本館ホームページに公開する予定です。

『白鳥になった人形』のお話

 今はちょうど夏休みということもあり、山形県立博物館分館の教育資料館(旧山形師範学校)でも、親子連れや家族連れのお客様が見られるようになりました。毎年夏休みになると、8月の原爆の日や終戦記念日に合わせて、テレビやラジオ、新聞で戦争に関した報道にふれる機会が多くなります。太平洋戦争が終結して今年で79年を迎えますが、教育資料館の展示室「戦時下の教育」の資料にじっくり見入るお客様の姿が、特に8月は多く見受けられます。

 山形師範学校出身の著名人では特に藤沢周平が知られており、教育資料館の展示室にも藤沢周平コーナーを設けていますが、皆さんは須藤克三を知っていますか?南陽市宮内生まれの教育者・児童文学者で、彼の作品の一つに『白鳥になった人形』という絵本があります。これは戦前に日米友好の証として日本中の小学校や幼稚園に贈られた、通称“青い目の人形”にまつわる実話を基にしたお話です。(山形県内には“青い目の人形”が160体もやってきたのですが、現存が確認されているのは12体です。)お話の簡単なあらすじは以下のようになります。

 ある“青い目の人形”が、山形県内の村山市にあった大倉小学校にあり、可愛がられ大切にされていました。その人形の世話をしていたのは女性の先生でした。やがて戦争が激しくなってくると、すべてアメリカのものは敵視され、とうとう人形を焼くように校長先生に厳命されました。しかし、先生は「罪もない」人形をどうしても焼くことはできません。やむなく、泣く泣く小学校の近くにあった、大倉堤に人形を沈めることになりました。「平和になったら白鳥になって戻っておいで」と声をかけました。やがて戦争が終わり、先生は早く白鳥がやってくるよう祈り続けました。それから何十年もの月日がながれ、白鳥がようやく大倉堤にたくさん飛んできたという話です。

 『白鳥になった人形』は実際にあったお話です。私自身も小学生の時にこの本を読み、子どもながらに、大きな空襲を受けていない田舎の村でも、戦争が人々の身近にあったのだと気づかされました。戦争のない日本で暮らせることがいかにありがたいことかとしみじみ感じました。

 悲しいことに世界ではいまだに戦争が終わらない国や地域があります。先日、大倉堤を訪れました。“青い目の人形”と人形を沈めた先生のことを思いながら、水面を見つめました。皆さん、この8月に改めて、戦争とは何かを身近な家族や友人などと一緒に考えてみませんか。

大倉堤
戦時下の教育 展示室 ジオラマ
戦時中の教科書

高校生学芸員一日体験講座を開催しました

 8月1日(木)、2日(金)、7日(水)に、毎年恒例の高校生学芸員一日体験講座を開催しました。今年は高校側からの要望も踏まえ、従来の2回から3回に増やしたこともあり、延べ54名という大勢の高校生に参加していただきました。

 8月1日(木)は、「山形の歴史やくらしにふれる」というテーマで、主に人文系の展示室とバックヤードの見学に加えて、考古部門、歴史部門、民俗部門の講座を実施しました。発掘された土器の洗浄作業(考古)や明治時代の紙幣の観察(歴史)、自宅の間取りと暮らしについての聞き取り調査(民俗)など、学芸員になったつもりで活動するワークショップを行いました。

 8月2日(金)は、「山形の自然とそのめぐみを知る」というテーマで、主に自然系の展示とバックヤードの見学に加えて、植物部門、動物部門、地学部門の講座を実施しました。標本のつくり方やラベルの書き方(植物)、カブトムシの標本作成(動物)、夏休み館内地質観察体験のイベント準備(地学)など、実際に学芸員が日頃行っていることを体験してもらいました。

 8月7日(水)は、「地域の文化財を巡り学芸員と語る」というテーマで、午前中は、学芸員とともに、教育資料館(旧山形師範学校)、専称寺、御殿堰、文翔館(旧山形県庁及び県会議事堂)を巡りました。午後には、座談会「学芸員ってどんな仕事?」で学芸員5名の熱い思いを聞いた後、グループ討議「こんな博物館が欲しい!」で高校生がアイディアを出し合いました。

 高校生からは3日間とも、とても楽しく有意義であったとの感想をいただき、是非、来年も開催して欲しいとの声がありました。

土器の洗浄
カブトムシの標本作成
イベント準備
文化財を巡る

記念講演会②を開催しました。

 当館では、6月から最上川をテーマとした特別展「海に入るまで濁らざりけり-『母なる川』最上川-」を開催しています。最上川に関わる文学や川絵図、流域に暮らした人々の生活の様子などを知ってもらえるよう、様々な資料を展示しています。

 7月27日(土)、放送大学茨城学習センターの小野寺淳(おのでらあつし)所長をお招きして記念講演会が開催されました。小野寺先生には河川絵図の研究者として、2008年の最上川展でもご講演いただいたご縁があります。

 演題は「河川絵図に描かれた最上川の水運」。最上川は急流で有名ですが、江戸時代の舟運はとても盛んで、小鵜飼船・ひらた船といった川船を使った輸送力は全国有数だったそうです。江戸時代の山形は幕府や大名の領地が入り乱れたため、年貢米を運ぶ商人の船が多かったため、船による荷物の輸送が活発になったとのことでした。

 舟運が盛んになったことは最上川の河川絵図がたくさん作られたことと大きく関係したようです。小野寺先生は最上川の河川絵図をおおきく3つに分類し、それぞれの特色や作成目的について詳しく説明していただきました。講演会の後半は実際に展示を見ながらのギャラリートークも行われ、受講者が小野寺先生の解説に熱心に耳を傾ける様子が見られました。

 受講者からは「最上川の舟運がどのようにして行われていたかよく分かりました」「小野寺先生のお話に引きこまれ興味がわきました」などの感想が寄せられました。

 特別展は8月18日(日)まで開催しています。県指定文化財「松川舟運図屏風」や「羽州川通絵図」をはじめ、最上川を描いた河川絵図を多数展示していますのでぜひご来館ください。

第2回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介していただく「博物館講座」を実施しております。
 7月20日(土)は東北芸術工科大学から岡陽一郎(おかよういちろう)先生を講師にお招きし、第2回博物館講座が開かれました。県内外から多くの方にご参加いただきました。
 講座の演題は「聖地・霊場のはじまり-地域社会との関わり」。岡先生は以前、岩手県で一関市で調査研究されており、その経験をもとに中尊寺や骨寺村(ほねでらむら)といった中世寺院や集落などから、地域社会と宗教施設との関わりについてお話しいただきました。
 今ではパワースポットともいわれることもある霊場や聖地は「この世のものとは思えない」美しい光景や変わった地形(山や洞窟等)にあるとされます。こうした聖地はその周辺にある集落が維持管理することで聖地として機能するというお話でした。また、集落周辺の境界にある原生林などは、中世社会においては魔境であり、すぐれた宗教者でなければ立ち入ることも、人の手で開発することもできず、開発されることで聖地・霊場となっていったとのことでした。
 中世社会における宗教観と、修練の場としての聖地・霊場を維持するというお話は、今までの考え方と違った視点から見ることができ、大変興味深いお話でした。
 アンケートでは「大変興味深く拝聴しました」「岡先生の分かりやすい説明のおかげで自分にも理解することができました」と好評でした。今後も専門家による研究成果を知ってもらう貴重な機会として機会として講座を開催したいと思っています。

 次回、第2回博物館講座は9月14日(土)、同じく東北芸術工科大学の松田俊介先生を講師に迎えて開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますのでぜひご参加ください。

来館者数1万人突破セレモニー

6月26日(水)に、今年度の来館者数が1万人を突破し、記念セレモニーが行われました。
これまでにご来館いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

1万人目のお客様は、鶴岡市立朝暘第四小学校の皆さまでした。
セレモニーの後、小学生の皆さまは熱心に館内の展示を見学していらっしゃいました。

なお、当館では8月18日(日)まで、特別展「海に入るまで濁らざりけり ―「母なる川」最上川―」を開催中です。
皆さまのご来館を心よりお待ちしておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

土器でドキドキ!? 出張博物館 in 小国小学校!

山形県立博物館では小中学校の授業に協力する「出前授業」を行っています。

6月26日(水)、小国町立小国小学校にて、ホンモノの土器を触ってもらいながら縄文時代について一緒に勉強しました。

今回は、歴史の学習を始めたばかりの小学6年生(46名)が参加してくれました。

一人一個ずつ配られた土器片をスケッチし、観察してくれた児童のみなさんからは、「ツルツルした所とデコボコした所がある!」「カタツムリみたいな文様がある!」「動かすとキラっと光る!」などなど、本物を触ることでしか得られない感想を聞くことができました。さらに、粘土板に縄(縄文原体)を押し付けて、どうやって文様が施されたのかを体験してもらいました。

また、地元小国町に所在する「下叶水(しもかのみず)遺跡」から発見された土器を用意し、地元の歴史に触れ、地元の縄文時代を感じてもらいました。

これからも当館が所蔵する考古資料を「地域の宝」として活かすことができたら嬉しいです。

写真1:土器を観察しスケッチする児童
写真2:土器を観察して感じたことを発表
写真3:児童が土器について感じたこと
写真4:小国町下叶水遺跡から発見された土器を触ってもらう

記念講演会①を開催しました。

 当館では、6月から最上川をテーマとした特別展「海に入るまで濁らざりけり-『母なる川』最上川-」を開催しています。最上川に関わる文学や川絵図、流域に暮らした人々の生活の様子などを知ってもらえるよう、様々な資料を展示しています。
 6月22日(土)、東北文教大学から菊地和博特任教授をお招きして記念講演会が開催されました。
演題は「最上川舟運で行き交うものと文化・くらし-民俗学の観点から」。菊地先生は以前、当館学芸員として勤務され、平成4年には山形の民俗文化を紹介する特別展「やまがたと最上川-上方文化との交流-」をご担当されました。菊地先生がお持ちの最上川流域の民俗文化についての見識をお話しいただく機会とさせていただきました。
 講演会では、最上川の舟運のあゆみや上方から伝播して定着した祭礼文化、青苧(あおそ)や紅花といった北前船によって上方にもたらされた特産品の話など、山形の民俗文化や産業に関して講演いただきました。また、朝日町出身の柴田謙吾(しばたけんご)氏の業績についてご紹介いただきました。柴田氏はその生涯をかけて最上川流域の文化を熱心に研究され、古文書や文献に記されない船頭や筏(いかだ)乗りを取材し、彼らが持つ深い知識や知恵を記録し紹介しました。船頭の仕事に関係する資料を数多く収集し寄贈されるなど、県立博物館とも深いつながりのある方です。
 参加者からは「最上川の歴史・文化について再認識ができて大変参考になりました」「村山市に住んでいるためとても身近に感じました」「柴田謙吾氏の人生訓、業績に感動しました」など多くの感想が寄せられました。
 特別展は8月18日(日)まで開催しています。柴田氏が10年の歳月をかけて制作した40mの川絵図「最上川絵図」の複製も展示していますのでぜひご覧ください。次回の講演会は7月27日(土)、放送大学茨城学習センターの小野寺淳所長(茨城大学名誉教授)をお招きし「最上川舟運と河川絵図の特色」についてお話しいただきます。ぜひご参加ください。

博物館で、こんな体験はいかがですか?

 今月1日から、最上川をテーマとした特別展「海に入るまで濁らざりけり-『母なる川』最上川-」を開催しています。昭和天皇が皇太子の時に詠まれ、現在では「山形県民の歌」として知られる最上川の歌からはじまり、江戸時代の絵図や美しい風景などを紹介しています。
 今回の展示を企画した担当者から、ぜひ皆さんに知ってほしいコーナーを2つ紹介したいと思います。1つは「最上川へのメッセージ」です。展示をご覧いただいたみなさんから、最上川への想いや展示の感想、最上川をテーマにした俳句などさまざまなメッセージを残してもらっています。いくつかご紹介します。
「最上川の大きさにびっくりしました。」(PN 玲南さま)
「様々な表情を見せてくれる最上川。楽しませてくれる最上川。これからも美しい川であるように。」(PNたけママさま)
「昭和天皇がお詠みになったうたが流れていて良かったです。村山市の三難所を特集してくれてありがとうございました。村山市出身者としてうれしかったです。」(PN alzさま)
「去年の秋、船下りをしてきて、最上川を舟の上から見る風景に感動しました。いつもそばにある最上川を大切にしていきたいと思います。」(PNすずきゆい・ゆうこさま)
「紅花や 最上舟唄 京の道」(詠み人知らず)
「古(いにしえ)を 語り唄いつ 最上川」(I.Hさま)
「日差しよし 風良し旅の 老一歩」(きたのしらとりさま)
 もう1つは「VR体験『やまはくメタバース』」。展示の中に、村山市の三難所をめぐるミニシアターがあります。難所のうち「三ヶ瀬(みかのせ)」を通る場面を360度の映像で撮影しました。約3分間のシーンを、VRゴーグルで体験できるというものです。博物館にいながら最上川を下る船の上にいるような不思議な感覚で、波をかき分けながら川幅の狭い難所を抜けていく迫力を感じてもらいたいと思います。VR体験は不定期で開催していますので、次回以降の開催日時はSNSでお伝えします。ぜひフォローしてください。
 特別展は8月18日(日)まで開催しています。ぜひご来館いただき、メッセージや俳句を残してください。お待ちしています。

第1回博物館講座を開催しました(報告)について掲載しました

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介していただく「博物館講座」を実施しております。
 6月8日(土)は東北大学東北アジア研究センターの竹原万雄(たけはらかずお)先生を講師に第1回博物館講座が開かれ、多くの方にご参加いただきました。
 講座の演題は「江戸・明治時代の旅と山形」でした。竹原先生は現在、地域に残る文書の調査を進めており、そこから「旅」にまつわる資料をもとに講演いただきました。朝日町大谷の地主鈴木清助氏が記録した明治12年の道中日記には、約5か月間にわたって全国を旅した行程や訪問先、宿泊場所や費用などが記されていたとのことで、特に旅にかかった費用に注目した話は興味深かったです。他にも、江戸時代に盛行した、全国の寺社にお経を納める「六十六部廻国巡礼」について、天童市に残された資料を中心に、巡礼の目的や納経にこめられた想いなどをお聞きしました。
 地域に残された文書を解読することで、新しいことを知ることができる、大変興味深い講座でした。

 次回、第2回博物館講座は7月20日(土)に、東北芸術工科大学の岡陽一郎先生を講師に迎えて開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますのでぜひご参加ください。

子どもの日イベント振り返り

5月5日の子どもの日は、毎年恒例の無料開館日でした。
600人を超える方にご来館いただき、12日まで行われていた第6回やまはくセレクション展をはじめ、子どもの日の特別イベントをお楽しみいただきました。

特別イベントはセレクション展探検シート、パズル版グンカンツミキ、みちのくこけし塗り絵、特別展プレイベント、国宝解説会と、もりだくさんの内容で実施しました。
中でも一番たくさんの方に参加していただいたイベントは、セレクション展探検シートでした。受付で探検シートを受け取って、セレクション展を中心に博物館を探検できるように、資料の見どころを探してみるという内容でした。小さなお子様が頑張って展示を見て探したり、お姉ちゃんが弟にヒントを出したりしている光景が見られました。

【どんなこけしを作ろうかな】

きっと、ふだん見慣れているものや景色の中にわくわくするような魅力を見つけてもらえたと思います。

さらに、厚紙のパーツで船を作って遊ぶパズル版グンカンツミキでは、なんと展示室で見つけたダイカイギュウを作ってくれるお子様がいらっしゃり、当館スタッフに驚きと感動を与えてくれました。まさしく子ども達のイマジネーションの力です!

【クジラを見ながらふね作り・・・ イマジネーションの海原が広がります】

そして極めつけは今年度に着任した考古担当学芸員による国宝解説会です。講堂での座学と、展示室で実物をみながらの解説などこちらも充実した内容でのデビューでした。

【新しい学芸員による国宝土偶の解説会デビュー】

また、今回の子どもの日では館内に用意されたアンケートを回答していただいた方を対象に、当館特製のミュージアムカードをお渡ししました。このミュージアムカードには4月から館内の一部資料に設置された音声ガイドを聞くことができるQRコードがあり、館内の音声ガイドをお家でお楽しみいただくことができます。

【アンケートに答えてミュージアムカード!なにがでるかな・・・】

今年度はまだまだ始まったばかりです。山形県立博物館では、一年間を通して楽しく、充実した展示やイベントを行いますので、今後もぜひご期待ください。

博物館講座のすすめ

こんにちは。青々とした新緑を眺めながら霞城公園を散策すると、爽やかな気持ちになれます。健康にも良さそうですね。しっかり日課にしたいものです。
さて、今回は、やまはくで毎年開催している「博物館講座」についてご紹介したいと思います。
「博物館講座」では、当館職員に加えて、外部研究機関の研究者の方々が講師を務めてくださり、山形県内の歴史、自然などの調査研究の成果等を講義する生涯学習の場として親しまれております。
毎回受講してくださるリピーターの方も多く、今年度は例年よりも1回増えての開催になります。
演題などは随時ホームページに掲載予定ですので、楽しみにお待ちください。

講座は、基本的に大人向けのものとなっておりますが、各専門分野に強い興味関心を持つ小学生が参加する姿もちらほらと。未来に向かって勉学に励む姿が眩しいです。

昨年は、地学部門の瀬戸学芸員による初講座「ブラヤマガタ」も大好評でした。

歴代館長による館長講座もバラエティに富んだ内容です。さまざまな質問で盛り上がることがあります。

今年度は、10月に動物部門の中川学芸員、令和7年2月に民俗部門の稲垣学芸員による初講座があります。12月には齋藤館長による館長講座です。
講座は、事前申込制【先着順】となっており、当館ホームページからの申込みをお願いいたします。
受講料は無料となっておりますが、展示をご覧になる際には入館料が必要となりますのでご注意ください。
第1回目は、6月8日 (土)に竹原万雄氏(東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門助教)による「江戸・明治時代の旅と山形」の講座があります。

お申し込みは、5月21日(火)からです。皆さまのご参加をお待ちしております!

第6回やまはくセレクション展ウラ話と民俗資料

霞城公園の今年のサクラ

霞城公園は例年よりも早く春爛漫となり、県立博物館もシャワーのような桜吹雪に包まれました。お花見にいらした方の中には、当館を見学された方も多くいらっしゃいました。きっと好評開催中の第6回やまはくセレクション展もお楽しみいただけたかと思います。

実は今回のセレクション展の取りまとめを民俗担当が行ないました。そこで少しだけセレクション展とともに学芸員のお仕事(活動)をお話ししたいと思います。

セレクション展の展示風景

今回を含めてこれまでに6回行われてきた「やまはくセレクション展」は、当館が新たに寄贈を受けた資料の他に、調査や整理が一段落した資料を展示しています。

今回のセレクション展では、初代山形県令三島通庸の佩刀や山形市で発見された化石木などを目玉の展示資料としています。そして、化石木の奥には、ハイイロオカミなど、たくさんの動物の剥製があります。この動物の剥製は去年大好評だったBones展で、資料をお借りしてきた博物館や個人の方から寄贈を受けた物を展示しています。

動物のはく製たち

博物館が貴重な物を集めることを「資料収集」といって、植物や昆虫を捕まえてくる「採集」や、古いお家の蔵で見つかった古い記録や道具を譲っていただく「寄贈」、お店や専門業者の方からお金を払って買い取る「購入」など様々な方法があります。たくさんの方々からご協力をいただいたことに感謝しながら、学芸員が一つ一つの物の価値を調べた上で博物館に受入れるか検討しています。

こうして集められた資料は、博物館の専用の倉庫(収蔵庫)で大切に保管していきますが、ずっとしまったままではありません。時々取り出して破損や汚れ、傷みがないかなど学芸員が状態を点検します。調査や研究するためにも良い状態で保存されないと、せっかくいただいた資料が資料としての役割を充分に発揮することができません。

今回、民俗分野から展示したたくさんのおもちゃは、8月に学芸員実習で整理・点検した資料です。(学芸員実習は、大学や短大で学芸員の資格を取得する課程を受けている学生が、資格を得るために実際の博物館で実習を行なう研修です)。実習生の学生達は当館での実習を通して、資料の点検や取扱いだけでなく、どのような展示が効果的か、どんな学びのイベントを行なうかなど、様々な学芸員の仕事に実際に関りながら学ぶことができます。

民俗展示のおもちゃ

 また、博物館で適切に管理するためにも、寄贈を受けた際にはどんな資料なのか調査を行います。たとえば民俗分野では、人々の生活の特徴や移り変わりを知るために資料を収集しますが、そのほとんどが古い道具や古文書などです。こうした資料はどのように調査研究するでしょうか。

県内での民俗資料の整理

私は仕事の一環で、旧家の蔵の中で古い道具を調べることがあります。中には江戸時代の物もあれば、2000年以降まで使われた最近の道具もあります。当然、古いものは貴重なものですが、新しいものも数十年後には人々の生活を知る必要な手がかりになります。

古文書や記録などは書いてある文字を読んで、情報を得ることができます。古い道具は使った人などから様々なお話を聞いていきます。そうすることでどこにでもある道具でも、使った人の工夫やコツ、感想などで他とは違う使い方がわかるかもしれません。

東根市の猪子踊り

もちろん、「物そのもの」の希少さも重要ですが、資料に関連する情報をたくさん集めることで資料の価値として記録します。時には踊りや言葉、技術など形のないものについても調査を行うことがあります。どんな服を着たか、どんなものを食べたのか、どんな仕事をしたのか、どんな人とどんなふうに関わったのかなど、大まかな手段や内容は同じでも、詳細は一人一人で必ず違います。

元々の所有者の方や関係者の方にご協力をいただいて行われた調査で得られた資料や情報を記録としてまとめることで、資料が増えて充実した博物館になっていきます。

第2展示室の民俗展示の民家

民俗は「人々の暮らし」です。人々の暮らしを担当している私は、県民一人一人がどんな風に暮らしてきたのか、暮らしているのかを追究しています。言わば、私にとっては県民の方々は先生でもあります。地域の中で移り変わってきたものも、変わらずに残そうとされているものもたくさんあるなかで、私たちはどんなことを考えてきたのでしょうか。

「どうしてこんな言い伝えがあるんだろう?」「このお祭りはどうやって行われているんだろう?」些細なきっかけで芽生えた疑問にも、漠然と感じた果てしない疑問にも、博物館にその答えやヒントがあるかもしれません。答えが見つかった時、私達は自分のことも相手のことももっと理解できるようになるはずです。だからこそ、県立博物館としてもまだまだ学ぶことがたくさんあります。

山形や日本で暮らしてきた人達がどんな思いで日々の生活を送ってきたのか。これからも学芸員の調査活動を通して得られた様々な魅力を、ただの面白さで終わらない発信をすることで、地域の理解につなげていきたいです。

地学と自然史と博物館

 3月24日(日)にやまぎん県民ホールにて、やまがた文化の回廊フェスティバル2024のオープンハウスに「ビーチコーミングで貝殻を拾おう!浜辺から考える自然環境」と題してイベントを開催致しました。

入口の近くということもあり、多くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。

今回のイベントは、庄内浜をイメージしまして、庄内浜で打ちあがっていた貝殻とゴミから、自然環境に関心を持っていただくというコンセプトでした。

 砂の中に埋まった貝殻を探す体験は、中々新鮮だったようで、ご参加いただいた方からは好評でした。

イベント中にありました、いくつかの質問につきまして、回答いたします。

Q.どこに行けば貝殻を拾えますか?

A.庄内浜でしたら、吹浦や宮海海水浴場で拾えます。海水浴シーズンになると海岸を掃除しておりますので、貝殻が減ります。これからの5月上旬位が寒くないし、月山道も凍結していないのでベストシーズンです。

Q.貝殻を拾ったけど、名前が付けられない。

A.慣れと言えばそこまでですが、まずは図書館などにある貝の図鑑を参照すると良いでしょう。初めから分厚い図鑑から探すと心が萎えるので、子供向けの写真が大きい図鑑をお勧めします。そこからさらに貝殻の沼にはまり込んだら、ご自身で図鑑を購入しましょう。

Q.博物館に持っていったら、名前を教えてくれますか?

A.可能なかぎり名前を付けるお手伝いをさせていただきます。その際は、事前に博物館にご連絡いただくとスムーズにご案内ができます。


 令和5年度やまはくセレクション展を5月12日まで開催しております。今年度のセレクション展の地学のテーマは、「自然史」です。ところで皆様は自然史と言う言葉を聞いたことがありますか?

 恐らく多くの方は、「う~ん、聞いたことがあるような、無いような・・・」と言った反応になるのではないでしょうか。皆様の中にはご専門の方もいらっしゃるとは思いますが、一般にあまり馴染みのないことと思います。

 まずは、自然史についてどんな意味なのかをこの場ではお答えするべきですが、自然史には、あまり明瞭な定義がありません(私の不勉強なだけですが)。ここでは自然史=自然史科学と言う広義の学問で、「動物や植物、鉱物、化石などの自然物」を対象として、「記載・分類する」ことで、「自然の多様性を紐解く」ことを目指しているとします。では、ここで自然史と博物館の関係について、少々述べたいと思います。

 山形県立博物館は、展示資料による分類上で総合博物館に分類され、自然と人文の両方の資料を展示しています。人文の展示は「縄文の女神」をはじめとした、第2展示室と第3展示室および教育資料館に展示しております考古、歴史、民俗、教育部門の資料です。対して、自然の展示は「ヤマガタダイカイギュウ」をはじめとした第1展示室と1階の分類展示と体験広場に展示しております地学、植物、動物の資料です。自然の資料のことを博物館学等では「自然史資料」と呼ぶことがあります。ようやく博物館と自然史が繋がってきたとようです。例えば自然史が博物館に冠される例として、ロンドン自然史博物館(Natural History Museum, London)があります。また、博物館の資料群を「コレクション」と呼ぶことがありますが、ロンドン自然史博物館では「動物、昆虫、古生物、植物、鉱物」と分けられています。国内でもいくつか自然史を冠している博物館がありますが、神川県立生命の星・地球博物館がKanagawa Prefectural Museum of Natural Historyと表記しております。ちなみ東京上野の国立科学博物館はNational Museum of Nature and Scienceなので、自然史も扱っていますが、理工学の分野の展示もあります。余談ですが、日本における国立自然史博物館は、現時点(2024年現在)で無いため、沖縄県に誘致しようとしております。気になったら調べてみてください(https://www.okinawanhm.com/)。

 さて、山形県の話から大分逸脱しましたが、山形県立博物館に話を戻します。山形県立博物館の地学部門では、資料の対象を「古生物、岩石、鉱物等」としております。これらは山形県に関する資料から世界の資料まで、それなりに幅広く展示しております。特に1階の分類展示では、教科書に載っているような資料を中心に展示しておりますので、是非地学の教科書を片手に見学いただければ面白いと思います。

 ここで話を体験広場に展示しているクロミンククジラの骨格標本に移します。体験広場に展示していますクロミンククジラは、現生のクジラですので、対象は生き物(動物部門)となります。ですが、所管しているのは地学となります。なぜ地学が今生きている動物を?と思った方は、大変鋭いご指摘です。では、仮に皆様が体験広場のクロミンククジラの前に立っていたとして、視線を下に移すと何が展示してあるか。そこには「ごっつい岩」がたくさん展示してあります。これらの「ごっつい岩」は、真室川町から発見された「マムロガワクジラ化石」です。マムロガワクジラ化石と言いましても、クロミンククジラの骨格のように1個体ではなく、様々なクジラの色々な部位が1か所から産出したものとなります。そのため、化石は部位毎に不完全です。ではそんな不完全な化石をどうすればクジラと分かるのか?答えは、今生きているクジラの骨と比較して記載することです。自然史は「動物や植物、鉱物、化石などの自然物」を対象として、「記載・分類する」ことで、「自然の多様性を紐解く」ことと初めに書きましたが、もし、世界に1つしかクジラの骨がなかったら、きっとマムロガワクジラ化石はクジラだと分からなかったと思います。

 もう一つの例を挙げますと、山形県立博物館地学部門の目玉であり、県指定天然記念物の「ヤマガタダイカイギュウ」ですが、発見当初はクジラの化石と思って発掘されました。それは、発掘当時、日本ではカイギュウ(ジュゴンやマナティーの仲間)の化石は、長野県で肋骨が一本だけしか発見されておらず、いわば化石記録の空白状態でした。しかし、実際に発掘した化石をクリーニング(化石から余分な岩石を取り除く作業)を進めるうちに、クジラにはない「歯」が出てきました。マッコウクジラやイルカなどの「ハクジラの仲間」には、餌である魚などを捕らえるための、歯がありますが、捕らえるための機能として、先端が尖っています。一方、クジラと思って発掘したヤマガタダイカイギュウの歯は、上面がすり減り、明らかに何かをすり潰す機能を持つ歯でした。ここに来てようやく、この化石の正体はクジラではないことが分かってきました。そして、紆余曲折あり、このすり減った歯の持ち主が、カイギュウの仲間であると分かり、アメリカからドムニング博士を招聘し、この世界に1つだけのヤマガタダイカイギュウが誕生しました。ここで勘の鋭い皆様は「世界に一つだけなのに何故分かった?」と気が付いたはずです。このヤマガタダイカイギュウと比較したのが、アメリカ西海岸からヤマガタダイカイギュウよりも前に産出していたジョルダンカイギュウでした。そして、実は現在展示してあるヤマガタダイカイギュウもジョルダンカイギュウから引き継いだ部分があるのですが、紙面の都合上、割愛させていただきます。

 博物館は、そんな自然史の「コレクション」を育てることが必要です。足元の石が何か知りたいと思って、図鑑を見ると図鑑の写真とは合わないことは多々あります。近年ではスマートフォンのカメラで知りたい物の写真を撮ると「先生」が答えてくれるようになりました。しかし、その「先生」は、きっとどこかの誰かが記載・分類した「何か」としか答えてくれません。それは真か偽であるかは、ここでは申せませんが、はっきりしていることは、どこかの誰かが記載・分類する時には、「コレクション」を見て、他の種や物質との違いを見極め、時には新種として記載し、時には異名(シノニム)として統合し、時には記載した本人が混乱し、時には捨てる(ゴミ箱分類群)ことを膨大な時間をかけているのです。その時に「地域の分類群」を知ることとして、博物館には地域に関する「コレクション」を育てていくことが求められます。そして、丹精込めて育てられた博物館のコレクションは、展示や調査・研究を通じて、皆様の教育に役立てていきます。

 令和5年4月1日から約70年ぶりで博物館法が改正となり、デジタルアーカイブの作成と公開が努力義務となりました。山形県立博物館でも博物館資料をデータベースとして公開しておりますので、是非活用いただければと思います。

 さて、自然史と博物館について短いながら、書かせていただきました。博物館は、単なる古いものを展示しているだけでも、イベントをするだけでもありません。もちろん、皆様に楽しんでいただけるイベントの実施を全力で取り組んでいますが、もっと皆様に博物館を「活用」して欲しいと思います。ちょっと困ったら博物館に行ってみるかと思えるような山形県立博物館を今後も目指して参ります。

 最後に地学部門担当の学芸員の思いを綴り、結びとさせていただきます。

諸君、私は地学が好きだ

諸君、私は地学が好きだ

諸君、私は地学が大好きだ!!

セレクション展開展しました

 令和5年度やまはくセレクション展がついに開展しました。今年も各部門から選りすぐりの資料が展示されています。常設展示では見ることができないレアな資料がたくさんありますので、この機会(期間は5月12日(日)まで)にぜひご来館ください。

 写真は、展示資料の一部ですが、これはいったい何でしょう?

 会場で探してみてくださいね。

ヒント:海にすむ生き物です。
ヒント:するどいツメをもつ肉食動物です

閑話休題

 博物館2階ロビーに、50年前の完成当時の建物の模型があるのを皆さんは見たことがありますか?そこにミニカーも一緒に展示しているのですが、この車に気が付いた人はいますか?

 これは「童夢零(どうむぜろ)」という車のミニカーです。この名前を聞いてすぐに分かった人はかなりのマニアですね。博物館ができた1970年~1980年代はスーパーカーブームといって、日本全国でフェラーリやカウンタックといった外国のスポーツカーがもてはやされていました。そんな中、1978年に日本製のスーパーカーとして発表されたのが「童夢零」でした。しかし結果的に発売されることはなく、幻の車として終わってしまいました。山形県立博物館が開館した当時の車として置いています。気になった方は、来館した時に見てみてください。

「高等女学校と実科高等女学校」

博物館では現在、プライム企画展「高等女学校と実科高等女学校~青春の学びと生活~」を絶賛開催中です!

明治から昭和初期にかけて女性が学ぶ高等教育の場としてあった「高等女学校」と「実科高等女学校(家事や裁縫などの実用科目を教えていた高等女学校の一種)」をテーマに、山形県の女子教育の歴史を振り返る展示会です。

中には、何だかとても難しい展示会みたい…と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし!一歩展示室に入ればレトロでノスタルジックな資料であふれており、そんな心配も吹き飛ぶことと思います!

・希少価値の高いシートマイヤー製やスタインウェイ製のグランドピアノ(大正や昭和初期のもの!)

・各学校の制服の変遷(実物やミニチュアで展示)

・修学旅行やスポーツなど学校行事を楽しむ学生の写真の数々

・寄宿舎の再現コーナー

・時間割り

などなど…当時の女子学生の生き生きとした姿が思い浮かぶ資料がいっぱいです!

私のイチオシ資料は、昭和7年の第一高等女学校(現 山形西高等学校)の制服です。

よく見ると…袖口や胸元に刺繍リボンがあしらわれています!お洒落!(リボンの柄も素敵なのでしゃがんで袖の中を覗き込んで見てくださいね)

ただ資料を眺めるだけでは物足りないという方のためには、企画展担当者による解説会もあります。より深く展示会を楽しめます。

お申し込みは不要ですので、是非お気軽にご参加ください!

◆展示解説会

12月2日(土) 13時30分~14時 第三展示室にて

※本展示会は12月10日(日)までの開催

※今回の企画展は撮影禁止