博物館ブログ

2022年6月
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そもそもマムロガワクジラとは?

 今月4日より、特別展「発掘30周年・マムロガワクジラ、新生代の海を泳ぐ ~やまがた北部の古生物~」が始まりました。おかげさまで、多くの方々からご来館いただいています。

 今回は、「そもそも、マムロガワクジラとは何か?」についてです。
 「マムロガワ」は、山形県北部に位置する真室川町のことです。山間部の道路の法面で大きな骨の一部が見つかり、1992年より1994年にかけて、当館が約600万年前の大型の鯨化石を多数発掘しました。マムロガワクジラという鯨の種類がある訳ではなく、このとき発掘した化石群の総称として、「マムロガワクジラ」と呼んでいます。

 鯨は、大きく「歯鯨」と「ヒゲ鯨」の2グループに分けられます。発掘したマムロガワクジラはヒゲ鯨が多く、ナガスクジラやセミクジラなどが識別されました。歯鯨のマッコウクジラも識別でき、多種類の鯨が生息していたようです。当時の新庄盆地一帯の海は、鯨が住みやすい環境だったのでしょう。大型の個体が多く発掘されたのも特徴的です。

 発掘されたマムロガワクジラの個体数は、まだ確定できていません。さまざまな部位があり、そして不完全な骨格も多いためです。最小で9個体、最大で45個体の集合体で、おそらく数十個体の鯨になると思われます。これほど多数の鯨の個体数が集中して発掘された例は、国内ではほとんどありません。とても貴重な記録を公開しています。

 7月2日(土)の13時30分から14時までの時間帯で、当館学芸員による解説会を開催します。実際の発掘にも携わっており、当時のエピソードを交えて解説します。ホームページからの事前申し込みとなりますので、該当ページをご確認ください。

頸椎(けいつい)の化石です

国宝土偶「縄文の女神」展示解説会を実施いたしました

令和4年6月19日(日)
 今年度初の国宝土偶「縄文の女神」展示解説会を実施いたしました。限られた時間での解説会でしたが、熱心に耳を傾けてくださいました。本当に感謝申し上げます。次回は8月14日(日)です。当館ホームページからの事前申込制になりますが、是非お早めにお申し込み下さい。

博物館講座①を開催しました

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野について、分かりやすく紹介していただく「博物館講座」を年6回実施しております。
 6月11日(土)東北大学の荒武賢一朗教授を講師にお招きして、博物館講座が開かれました。
講座の題材は「近世における尾花沢・柴崎家の商業と社会貢献」でした。荒武先生の御専門は日本近世・近代の経済史ということで、尾花沢の有力商人柴崎家のことをお話しいただきました。
江戸時代の中頃から、紅花商人として大きく成長した柴崎家は、京都や江戸に分家や支店を持つ有力な商人として栄えました。ただ金儲けをするだけでなく、村山地方で飢饉が起こった時には、代官所と連携しながら民衆に食料を援助することもありました。
 柴崎家は、その財力を元に多くの大名への貸し付けも行いました。今回の講座では、米沢藩との貸し借りを取り上げ、商人と大名とのやりとりを、実際の古文書の記述をもとにユーモラスにお話ししていただきました。滞在日数や服装、やりとりの様子などが古文書に残されることはほとんどなく、県立博物館にとても貴重な資料が残されていることを知ることができました。地元の歴史を、当時の文書から知ることができ、大変興味深い講座でした。

 次回の博物館講座②は7月11日(土)に、東北芸術工科大学の田口洋美教授を講師として開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますので、こちらもぜひご参加ください。

附属自然学習園での「大人の遠足」

 県立博物館には、附属施設として自然学習園があり、自然学習の場を提供しています。山辺町畑谷の「県民の森」にある琵琶沼を中心に開設しています。

 この一帯は、クリ、ミズナラ、アカマツなどの林に覆われ、琵琶沼にはホロムイソウ、ヒメカイウといった氷河期からの生き残りと言われる植物があり、動物では両生類のクロサンショウウオ、モリアオガエルや、昆虫類のなかではアオイトトンボ、ハッチョウトンボなど20種類以上を産するなど、貴重な生態となっています。このように自然のままの姿が残され、貴重な動植物が分布している湿原であることから、昭和53年(1978年)に県の天然記念物に指定されました。

 また琵琶沼を含む周辺は、白鷹山の山麓の海抜約600メートルに位置し、畑谷大沼をはじめ荒沼、曲沼など数十か所の湖沼群があります。山形県立博物館『平成6年度 琵琶沼緊急調査報告書 -地学・動物-』(1995年)によれば、もともと白鷹山の主峰は、現在よりも北に中心があり、今より標高が高い火山であったと考えられています。しかし山体崩壊が発生し、さらに地すべりなども起きながら、現在の地形が形成されていったようです。西黒森山、白鷹山、高森山からなる稜線は、カルデラの地形を示しており、琵琶沼からは西~南側になります。

 このような環境のもと、自然学習園は、動植物や地形など自然系における豊かな学習を提供する施設です。今年度も、6月25日に「大人の遠足 夏山歩 琵琶沼自然観察会」を企画しました。申し込み締め切りは、6月11日(土)です(ただし定員になり次第終了します)。詳しくは、該当のページをご参照ください。

特別展が始まりました!

 6月4日(土)から特別展「発掘30周年、マムロガワクジラ、新生代の海を泳ぐ~やま
がた北部の古生物~」が開展しました。
 マムロガワクジラの全化石を中心に、第三展示室内はクジラやイルカ、鰭脚類や貝類な
どの化石で埋め尽くされており、非常に見ごたえのある展示となっております!

展示会場の中央

  マムロガワクジラの化石はもちろん、その他にも貴重な展示物がたくさんあります。
 今回はその中からいくつか紹介したいと思います。

 まずはキタトックリクジラの骨格標本(国立科学博物館より借用)

キタトックリクジラ(国立科学博物館蔵)

  不思議な形ですよね。国内にはほとんど標本が存在しないとの事です。他のクジラ化
 石と見比べてもらうと明らかに形が違うことが分かります!

  次にミズホクジラ化石(岩手県立博物館より借用)

ミズホクジラ化石(岩手県立博物館蔵)

  非常にきれいにクリーニングされた化石で、古代のクジラの骨格がはっきりと分かる
 資料です。こちらも必見!

  最後にこちら

  いかがでしょう。この資料は何か分かりますでしょうか。

  正解は…

  イッカクの角(牙)でした!こちらも国立科学博物館からお借りいたしました。
 当初はレプリカを展示予定でしたが、科博さんのご厚意で本物を展示しております!
 
  他にもまだまだ紹介したい資料がたくさんあるのですが、あまり紹介しすぎると見に
来ていただく楽しみが無くなってしまうのでこの辺で…

 今年度の特別展は8月28日(日)まで開展しております。化石に興味のある方は
ぜひとも博物館へ足をお運びください♪

特別展を観ればクジラ博士に!

 特別展「発掘30周年・マムロガワクジラ、新生代の海を泳ぐ ~やまがた北部の古生物~」が始まりました。最初の来館者は、茨城県にお住いの方でした。遠路からお越しいただいて、大変ありがたいものです。順調にスタートが切れました。

 本県北部に位置する真室川町において、1992年より1994年にかけて新生代約600万年前の大型のクジラ化石(マムロガワクジラ)が当館によって発掘されました。今年は最初の発掘から30年となる節目もあり、全化石を公開して、その全容と調査・研究の成果を紹介します。
 展示資料は、約230点に上ります。入口を過ぎると、島展示されたマムロガワクジラの化石群がお迎えします。島の中心に設置された巨大な頭部や顎は、重厚感あふれ見応え十分です。
 また、マムロガワクジラ以外のクジラも多種紹介しています。解説も工夫していますので、クジラの「ミニ博士」になれる絶好の機会です。ご来館をお待ちしています。
(公式ツイッターも、引き続きチェックしてください。)

右の下顎骨の化石です