霞城公園は例年よりも早く春爛漫となり、県立博物館もシャワーのような桜吹雪に包まれました。お花見にいらした方の中には、当館を見学された方も多くいらっしゃいました。きっと好評開催中の第6回やまはくセレクション展もお楽しみいただけたかと思います。
実は今回のセレクション展の取りまとめを民俗担当が行ないました。そこで少しだけセレクション展とともに学芸員のお仕事(活動)をお話ししたいと思います。
今回を含めてこれまでに6回行われてきた「やまはくセレクション展」は、当館が新たに寄贈を受けた資料の他に、調査や整理が一段落した資料を展示しています。
今回のセレクション展では、初代山形県令三島通庸の佩刀や山形市で発見された化石木などを目玉の展示資料としています。そして、化石木の奥には、ハイイロオカミなど、たくさんの動物の剥製があります。この動物の剥製は去年大好評だったBones展で、資料をお借りしてきた博物館や個人の方から寄贈を受けた物を展示しています。
博物館が貴重な物を集めることを「資料収集」といって、植物や昆虫を捕まえてくる「採集」や、古いお家の蔵で見つかった古い記録や道具を譲っていただく「寄贈」、お店や専門業者の方からお金を払って買い取る「購入」など様々な方法があります。たくさんの方々からご協力をいただいたことに感謝しながら、学芸員が一つ一つの物の価値を調べた上で博物館に受入れるか検討しています。
こうして集められた資料は、博物館の専用の倉庫(収蔵庫)で大切に保管していきますが、ずっとしまったままではありません。時々取り出して破損や汚れ、傷みがないかなど学芸員が状態を点検します。調査や研究するためにも良い状態で保存されないと、せっかくいただいた資料が資料としての役割を充分に発揮することができません。
今回、民俗分野から展示したたくさんのおもちゃは、8月に学芸員実習で整理・点検した資料です。(学芸員実習は、大学や短大で学芸員の資格を取得する課程を受けている学生が、資格を得るために実際の博物館で実習を行なう研修です)。実習生の学生達は当館での実習を通して、資料の点検や取扱いだけでなく、どのような展示が効果的か、どんな学びのイベントを行なうかなど、様々な学芸員の仕事に実際に関りながら学ぶことができます。
また、博物館で適切に管理するためにも、寄贈を受けた際にはどんな資料なのか調査を行います。たとえば民俗分野では、人々の生活の特徴や移り変わりを知るために資料を収集しますが、そのほとんどが古い道具や古文書などです。こうした資料はどのように調査研究するでしょうか。
私は仕事の一環で、旧家の蔵の中で古い道具を調べることがあります。中には江戸時代の物もあれば、2000年以降まで使われた最近の道具もあります。当然、古いものは貴重なものですが、新しいものも数十年後には人々の生活を知る必要な手がかりになります。
古文書や記録などは書いてある文字を読んで、情報を得ることができます。古い道具は使った人などから様々なお話を聞いていきます。そうすることでどこにでもある道具でも、使った人の工夫やコツ、感想などで他とは違う使い方がわかるかもしれません。
もちろん、「物そのもの」の希少さも重要ですが、資料に関連する情報をたくさん集めることで資料の価値として記録します。時には踊りや言葉、技術など形のないものについても調査を行うことがあります。どんな服を着たか、どんなものを食べたのか、どんな仕事をしたのか、どんな人とどんなふうに関わったのかなど、大まかな手段や内容は同じでも、詳細は一人一人で必ず違います。
元々の所有者の方や関係者の方にご協力をいただいて行われた調査で得られた資料や情報を記録としてまとめることで、資料が増えて充実した博物館になっていきます。
民俗は「人々の暮らし」です。人々の暮らしを担当している私は、県民一人一人がどんな風に暮らしてきたのか、暮らしているのかを追究しています。言わば、私にとっては県民の方々は先生でもあります。地域の中で移り変わってきたものも、変わらずに残そうとされているものもたくさんあるなかで、私たちはどんなことを考えてきたのでしょうか。
「どうしてこんな言い伝えがあるんだろう?」「このお祭りはどうやって行われているんだろう?」些細なきっかけで芽生えた疑問にも、漠然と感じた果てしない疑問にも、博物館にその答えやヒントがあるかもしれません。答えが見つかった時、私達は自分のことも相手のことももっと理解できるようになるはずです。だからこそ、県立博物館としてもまだまだ学ぶことがたくさんあります。
山形や日本で暮らしてきた人達がどんな思いで日々の生活を送ってきたのか。これからも学芸員の調査活動を通して得られた様々な魅力を、ただの面白さで終わらない発信をすることで、地域の理解につなげていきたいです。