博物館ブログ

Museum Blog

第6回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介する「博物館講座」を実施しております。中でも、東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門とは連携事業の一環として、2013年度から毎年講師を派遣していただき、最新の研究成果をもとに山形県の地域史を題材としたご講演をいただいています。

 1月18日(土)の第6回博物館講座では、東北大学東北アジア研究センターの荒武賢一朗教授をお招きし、「地域をかけめぐる江戸時代の商人と流通」という演題でご講演いただきました。
 荒武先生のご専門は北前船による日本海流通など近世・近代の経済史ということで、以前も新庄藩の経済や尾花沢の商人柴崎家の社会貢献についてお話されています。
 今回は江戸時代の山形の商人の活動についてお話しいただきました。紅花や青苧といった山形の特産物を京都・江戸などに出荷・販売する商いで栄えた長谷川家・福島家の商業活動、上杉氏の城下町米沢の商工業や租税、倹約令の記録からみた経済の様子、庄内地方の温海地区における山形・鶴岡・酒田の商人の出入りなど、山形県各地の商人たちの動きについて、まさに「かけめぐる」様子を知ることが出来ました。江戸時代初期から伊勢・近江の商人が山形に進出してきたことの理由、また近江商人が山形に土着していく中でどのような行動をとったかなど、商業都市山形の姿を知るきっかけともなりました。

 参加者からは「米沢や山形の商業の発展を理解できた」「近江商人の山形出店までの長い歴史が初めて分かりました。蒲生が影響しているとは」「久しぶりに歴史の勉強をさせていただきました。機会があればまた出席したいと思います。」といった感想が聞かれました。

 次回は2月1日(土)、当館の稲垣圭祐学芸員による第7回博物館講座「日本人と麺食~日本人はどのような麺を食べてきたのか~」を開催します。詳しくはホームページでお知らせしておりますので、ぜひご参加ください。

「大切な文化財を火災から守りましょう」

冬は火災のリスクが非常に高まる季節です。国の重要文化財に指定されている教育資料館では
毎年1月下旬に火災を想定した総合的な消防訓練を実施しています。
今年は1月29日(水)10時から実施予定です。当日来館されたお客様には避難訓練に参加して
いただく場合がございますので予めご了承くださいませ。

教育資料館職員と博物館本館職員が合同で訓練を行います。
山形市消防署員の立ち会い指導の下、避難誘導・通報の演習と屋外消火栓を使用しての
放水訓練など様々な訓練を行う予定となっております。

(資料館の屋外消火栓)
(一番古い屋外消火栓 ※現在は使われておりません)

上記の写真は敷地内に設置されている屋外消火栓です。
近年の消火栓とは異なる珍しいデザインをしているのでご紹介させていただきました。
とてもレトロな見た目をしていますよね。

そして毎年1月26日は「文化財防火デー」に制定されています。
出火防止対策を徹底することはもちろんですが、万が一火災が発生した際に被害が最小限で済むよう
日頃から防火意識を高め、貴重な文化財をみんなで守っていきましょう。

◇ 資料館からのお知らせ

1/29(水)10:00~ 消防訓練実施

冬の資料館はとても寒いので防寒対策をしっかりしてお越しください。
本年もたくさんの方のご来館を心よりお待ちしております。

今年度の来館者数が3万人を達成しました

12月6日(金)、今年度の来館者数が3万人を達成しました。3万人目となった来館者の方に、館長より認定書と記念品をお渡しして記念セレモニーをさせていただきました。

また、9月28日より開催されたプライム企画展「東北の自然史大図鑑-The Great Natural History Of Tohoku-」は、多くの方にご覧いただき12月15日(日)に閉展いたしました。ご来館いただいた皆さま、ありがとうございました。
さて、ただ今博物館では「2025年版やまがた県民手帳」を窓口で御提示いただいた入館者の方に、プレゼントを進呈しています。期間は令和7年3月30日(日)までとなっております。(プレゼントがなくなり次第終了となりますのでお早めにお越しください)皆さまのご来館をお持ちしております。

第5回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介する「博物館講座」を実施しております。

 12月14日(土)は当館の齋藤祐一館長が講師を務め、第5回博物館講座が開かれました。
 齋藤館長は今年4月から県立博物館に着任されましたが、昨年度までは鶴岡市にある県立加茂水産高等学校の校長先生を勤められていました。県内唯一の水産高等学校での勤務を通して得られた知見をもとに、「山形県の海事情-漁業の様子と水産高校の取り組みのご紹介-」という演題で講義されました。
 山形県は自然の恵みが豊富で、海の幸も豊富だと感じていましたが、海面漁業・養殖業の生産額が全国第39位(海岸線をもつ都道府県では最下位)という事実に驚きました。また、漁業に携わる方々が少なく高齢化も進んでいること、大型船舶も少なく山形県の漁業が縮小傾向にあることなど、これまであまり知られていなかったことを教わりました。また、サワラやカニのブランド化、漁業に魅せられた人々の移住など、山形県の漁業を活性化させようとする取組みがあることも紹介していただきました。
 参加者からは「山形県の水産量の少なさに驚きました」「漁業者の育成や他業からの転業といった実情を知ることが出来ました」「なかなか海の話を聞くことがないので、とても興味深くお聞きしました」といった感想や「時間が足りなかったので後半のお話もお聞きしたかったです」「毎年いろいろな分野のお話を聞けるので、館長講座楽しみです」など館長の講座を希望する声がありました。

 次回は1月18日(土)、東北大学東北アジア研究センターの荒武賢一朗教授による第6回博物館講座「地域をかけめぐる江戸時代の商人と流通」を開催します。詳しくは近日中にホームページ上でお知らせしますので、ぜひご参加ください。

「イチョウって…」

秋と言えば紅葉!現在、博物館前にあるイチョウも黄金に色づき、とても綺麗です。
さて、そんなイチョウですが、太古の昔から地球上に存在していたことをご存知ですか?
なんと、その歴史は2億年以上にもなるそうです!東北でも、岩手県久慈地域から、新生代 古第三紀 暁新世~始新世(約6600万~3390万年前)のイチョウの化石が見つかっています。

実はこの化石、現在開催中のプライム企画展「東北の自然史大図鑑―The Great Natural History of Tohoku―」の会場にて展示中です。

(岩手県立博物館蔵)

形、そのままですね…!
人間が登場する遥か昔から変わらないものが身近に存在するなんて!なんだかワクワクしてきませんか?
今回の企画展では、東北各地の「化石、岩石、鉱物」に焦点を当て、魅力あふれる東北5億年の自然史を紹介しています。

山形が誇る、世界でたったひとつだけの化石「ヤマガタダイカイギュウ」の実物も6年ぶりに公開します!
青森県指定天然記念物「アオモリムカシクジラウオ」も県外初公開です!
東北6県の県の石、勢ぞろいしています!
隕石、三葉虫、アンモナイト、琥珀、恐竜の化石(レプリカ、一部分のみ)、貝や植物の化石などなど…盛りだくさんのワクワクする資料が皆さんをお待ちしています!!

会期は12月15日(日)までです!
東北地方の、ひいては地球の歴史に思いを巡らせてみませんか?

★展示図録を販売中!これ1冊に東北の自然史がギュッと詰まっています!
★12月7日(土)13:30~担当学芸員の解説会があります!申し込みは不要ですので、お気軽にご参加ください。(博物館の入館料が必要です)

(当館蔵)

ちなみに、今回のブログ担当のお気に入りはこの三葉虫です。何でエビぞり?
会場で探してみてください!

第4回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介する「博物館講座」を実施しております。
 9月14日(土)は当館職員の中川裕太学芸員が講師を務め、第4回博物館講座が開かれました。
 中川学芸員は今年4月から勤務をはじめたばかりで、県立博物館で話をするのは今回が初めてでした。最初こそ緊張した様子でしたが、参加者の皆様の関心も高く、熱心に話を聞いてもらえたためか、次第に滑らかなスピーチができるようになっていました。
 講座の演題は「野生動物を調べる-その方法と実践-」。中川学芸員が以前勤務していた、野生動物の生態を調べる企業での体験を交えながら、調査に使う道具や調査方法を紹介したり、実際の調査の様子を動画で流したりと、普段の生活では知ることのできない野生動物とのかかわりを知ることが出来る、貴重な講演でした。
 また、本物の動物の頭骨を使い、資料と照らし合わせながら動物の種類を当てるというワークショップも行いました。参加者も隅々まで眺めながら、楽しく参加してもらうことが出来ました。
 次回は12月14日(土)、齋藤祐一館長による第5回博物館講座を開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますので、ぜひご参加ください。

プライム企画展「東北の自然史大図鑑」開展

長く厳しい暑さもようやく和らいで、朝晩は肌寒いくらいの日が増えてきた山形ですが、皆さんがお住いの地域はいかがでしょうか。
博物館そばの桜並木の樹木は、連日の猛暑に耐えた疲れが出ているのか、もうすでにかなりの葉を落としています。猛暑による疲れや急な寒暖差は、樹木だけでなく人も不調になりがちですので、この時期体調に気をつけて過ごしたいですね。

自然豊かな霞城公園では、これから秋ならではの光景が様々見られるようになり、散策がより楽しい季節になります。その先陣を切るように、いつの間にか東大手門付近でヒガンバナが咲き始めていました。大変な暑さが続いた夏でしたが、季節の変わり目を察知して現れた鮮やかな赤い花を見ると、やっと暑さがおさまって秋が来るんだとホッと安心する思いです。

さて、博物館では、9月28日(土)から12月15日(日)まで、プライム企画展「東北の自然史大図鑑 The Great Natural History of Tohoku」を開催します。東北各地の「化石、岩石、鉱物」に関連する資料に焦点を当て、東北地方の自然史の魅力を紹介する内容になっています。当館SNSでも連日関連情報を発信していますので、ぜひチェックしていただき、秋の散策とあわせて博物館へお越しください。お待ちしています!

第3回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介していただく「博物館講座」を実施しております。
 9月14日(土)は東北芸術工科大学から松田俊介(まつだしゅんすけ)先生を講師にお招きし、第3回博物館講座が開かれました。県内外から多くの方にご参加いただきました。
 講座の演題は「民俗芸能の技と知恵を引き継ぐ」でした。山形県の各地には、遊佐町の番楽「杉沢比山」をはじめ、古くから地域に伝わる民俗芸能が数多く存在します。古くは江戸時代から伝わるというこうした地域の民俗芸能が、少子化などで担い手が不足しているという問題があり、伝統の継承や存続が課題となっています。こうした現状の中、地域外人材の活用(外部化)や、映像や音声の記録を保存・伝達する工夫(情報化)、現代の情勢に合わせ日程や規制を緩和する(意義の問い直し)といった取り組みにより、民俗芸能の技術や意義を後世に伝えていこうという動きがあることを知ることが出来ました。そこには、民俗芸能を守りたいという地域の方々の熱い想いが感じられました。高擶小学校(天童市)では地元の小学校で獅子踊りを継承するなど、子どもたちを通して共存する姿も紹介されました。
 アンケートでは「伝統芸能の保存は大変難しい現実に直面しており、継承への提案があり参考になった。」「知らない芸能もたくさんあることを認識いたしました。後進育成のことについても考えさせられました。」といった意見が寄せられ、民俗芸能の今後について皆さんも考えられていることが伝わりました。今後も専門家による研究成果を知ってもらう貴重な機会として講座を開催したいと思っています。

 次回、第4回博物館講座は10月19日(土)、当館で動物部門を担当している中川裕太学芸員を講師として開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますのでぜひご参加ください。

博物館実習を実施しました

 8月17日(日)~23日(金)の期間、学芸員の資格取得を目指す大学生を対象とした博物館実習を実施しました。今年は、7大学から12名の大学生を実習生として受け入れました。

 常設展示やバックヤードなど、実際の博物館の見学に加えて、各分野の学芸員から資料の取扱い等について講義や演習を通して直接指導を受けたり、企画展示の撤収作業を実際に体験してみたり、教育普及事業や広報活動、他機関との連携など、学芸員の専門分野以外の業務について学んだりして、博物館の運営全般について幅広く知る機会となりました。

 今年は特に、実習期間中に国宝「縄文の女神」を他施設に貸し出す業務に立ち会うことができました。絶対にミスの許されない作業であるため、移動や梱包の手順について何度もシミュレーションを行った上で実行に移すというプロの仕事を、固唾を飲んで見守った経験は極めて貴重なものでした。

 最終日には、実習生が各自テーマを定めて、展示物の解説をしてみるという模擬解説に挑戦しました。各実習生は緊張の中にも、丹念に調べて準備した成果を十分に発揮して、分かりやすく、興味深い解説ができたようです。

 実習に参加した学生には、これを機に博物館への関心をさらに高めて、学芸員という職業を選択肢の一つに加え、今後一層勉学に励んでいただきたいと思います。なお、来年度の実習生の募集については、令和7年1月以降に本館ホームページに公開する予定です。

『白鳥になった人形』のお話

 今はちょうど夏休みということもあり、山形県立博物館分館の教育資料館(旧山形師範学校)でも、親子連れや家族連れのお客様が見られるようになりました。毎年夏休みになると、8月の原爆の日や終戦記念日に合わせて、テレビやラジオ、新聞で戦争に関した報道にふれる機会が多くなります。太平洋戦争が終結して今年で79年を迎えますが、教育資料館の展示室「戦時下の教育」の資料にじっくり見入るお客様の姿が、特に8月は多く見受けられます。

 山形師範学校出身の著名人では特に藤沢周平が知られており、教育資料館の展示室にも藤沢周平コーナーを設けていますが、皆さんは須藤克三を知っていますか?南陽市宮内生まれの教育者・児童文学者で、彼の作品の一つに『白鳥になった人形』という絵本があります。これは戦前に日米友好の証として日本中の小学校や幼稚園に贈られた、通称“青い目の人形”にまつわる実話を基にしたお話です。(山形県内には“青い目の人形”が160体もやってきたのですが、現存が確認されているのは12体です。)お話の簡単なあらすじは以下のようになります。

 ある“青い目の人形”が、山形県内の村山市にあった大倉小学校にあり、可愛がられ大切にされていました。その人形の世話をしていたのは女性の先生でした。やがて戦争が激しくなってくると、すべてアメリカのものは敵視され、とうとう人形を焼くように校長先生に厳命されました。しかし、先生は「罪もない」人形をどうしても焼くことはできません。やむなく、泣く泣く小学校の近くにあった、大倉堤に人形を沈めることになりました。「平和になったら白鳥になって戻っておいで」と声をかけました。やがて戦争が終わり、先生は早く白鳥がやってくるよう祈り続けました。それから何十年もの月日がながれ、白鳥がようやく大倉堤にたくさん飛んできたという話です。

 『白鳥になった人形』は実際にあったお話です。私自身も小学生の時にこの本を読み、子どもながらに、大きな空襲を受けていない田舎の村でも、戦争が人々の身近にあったのだと気づかされました。戦争のない日本で暮らせることがいかにありがたいことかとしみじみ感じました。

 悲しいことに世界ではいまだに戦争が終わらない国や地域があります。先日、大倉堤を訪れました。“青い目の人形”と人形を沈めた先生のことを思いながら、水面を見つめました。皆さん、この8月に改めて、戦争とは何かを身近な家族や友人などと一緒に考えてみませんか。

大倉堤
戦時下の教育 展示室 ジオラマ
戦時中の教科書